Daigas Group 大阪ガスグループは、Daigasグループへ。

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~震災後の急激に高まったニーズに迅速対応し、
わずか1年で開発~

自立運転機能付きガスヒートポンプ
(GHP)「エクセルプラス」

震災後の急激に高まったニーズに迅速対応し、わずか1年で開発自立運転機能付きガスヒートポンプ(GHP)「エクセルプラス」

DEVELOPER INTERVIEW

開発者インタビュー

震災後の急激に高まったニーズに迅速対応し、わずか1年で開発

自立運転機能付きガスヒートポンプ
(GHP)
「エクセルプラス」

東日本大震災後の電力不足で実施された計画停電。このとき、病院などでは、空調をはじめ照明等が使えない厳しい状況に陥りました。このため、病院やオフィスビルの空調システムを停電時も運転したいというニーズが急激に高まりました。そこで、停電時でも空調運転が可能、さらに照明にも電気を送ることができる自立運転機能付きのガスヒートポンプ(GHP:商品名「エクセルプラス」)の開発に着手し震災後1年足らずにて商品化を実現。この「エクセルプラス」のスピード開発に成功したカギを探りました。

MEMBER

エネルギー事業部

  • エネルギー技術部 業務用・空調技術チーム 副課長 山下 祥史

    エネルギー技術部 業務用・
    空調技術チーム 副課長

    山下 祥史

停電時でも空調や照明が必要なお客さまの
ために、
ガスで何ができるかを考える

GHPとは、ガスエンジンヒートポンプの略で、ガスエンジンで圧縮機を駆動し、ヒートポンプで冷暖房を行う空調システムです。ガスエンジンで駆動するため、電気の消費量も少なく、夏の電力需要ピーク時の節電にも大きく貢献できます。また、冬季の暖房時にはガスエンジンの排熱を利用できるため、高い効率で運転可能です。そのため、近年では、熱需要の少ないオフィスビルや病院、老人健康・福祉施設、学校などで、エリア別に運転する個別空調として数多く採用されています。
2011年3月に発生した、東日本大震災。当初の混乱状態が落ち着き、やがて電力不足解消のための計画停電が実施され始めたときに起きた病院や施設での出来事に大変驚きました。病院では、非常用電源があっても手術室など重要度の高い設備に充てられることがほとんどで、空調システムまで電源が確保されておらず、大変困られたそうです。その頃は、いつまで電力不足が続くのかわからない不透明な状況でしたので、夏に計画停電が実施され空調システムが停止すると、入院患者さんが暑さで大変ご苦労されるのではないかとの懸念がありました。
そんな中、私たちは震災後の計画停電が始まった直後から、ガスシステムでどのような貢献ができるのかを考え始めました。そして震災から1ヶ月も経たない3月の末、私たちは、非常に消費電力が少ないGHPで、計画停電や長期停電時でも、ガスさえ供給されたら稼働するシステムの開発が有効ではないかという結論に達しました。GHPメーカーのパナソニック株式会社様に打診した結果、東京ガス様、東邦ガス様、大阪ガスのガス3社と、パナソニック様の共同プロジェクトがスタートすることとなりました。

高効率ヒートポンプ ガスヒーポンのしくみ

蓄積されたノウハウを活用し、短期間で開発

今回のGHP開発共同プロジェクトは、先々の電力不足への懸念と、それにより引き起こされる多くの人々の節電努力緩和にできるだけ早く対応するために、1年以内という究極の短期間で開発することを、まず決定しました。この短期間の開発が可能であると見込んだ根拠は、大阪ガスの発電機能付きGHPのノウハウの存在でした。大阪ガスでは、10年前からガスエンジンの余力で発電機を回して発電もできるGHPの商品化に取り組んできました。2003年には発電機を搭載し、機器内部の冷却ファン・冷却水ポンプに発電した電力を送る「ハイパワーマルチ」を発売開始しています。2006年には、これをさらに進化させ、パナソニック(当時、三洋電機)様と共同で、さらに大きな発電機や電力系統に発電電力を供給するためのインバータを搭載し、GHPを使えば使うほどに外部の室内機や照明にも電気を供給できる「ハイパワーエクセル」を商品化していました。

私たちは、この「ハイパワーエクセル」をベースにバッテリーをプラスし、停電時にはこのバッテリーを使ってエンジンを起動し発電を開始、そしてGHPの補機や室内機に電力供給するシステムを提案しました。商品のコンセプトは、『通常時は空調しながら発電する高効率GHP、いざというときには確実に電源確保できる自立運転GHP』です。

蓄積されたノウハウを活用し、短期間で開発

しかし、バッテリーをプラスするだけという一見簡単な構成ですが、停電時に確実に起動させるための回路構成、停電時に発電を優先し安定して送電を行うためのガスエンジンの制御方法、電力会社の電気系統への接続方法、さらには、バッテリー電源の使用頻度を少なくしてバッテリーの長期信頼性を確保する回路構成など、クリアするべき課題は山積みでした。これらを解決し1年で開発を完了するには、後戻りすることは許されない計画でした。

幸い私は、GHP開発に携わる前には、ガスコージェネレーションシステムの電気設計を担当しており、停電時の自立起動システムを設計したこともありました。このときの経験を活かし、前述の回路構成やバッテリーの機器内のレイアウトなどをまとめた開発案の作成から、停電時に系統を自動で切り替える電気盤を作成可能なメーカーの調査と選定まで行い、さらに、電力系統への接続方法については電力会社との協議もスムーズに進め一発でOKをもらうなど、すべての課題に確実に対処することができました。いま思い返せば、このことが幸運となり、短期間の開発に貢献できたと感じています。

電源自立型GHP <エクセルプラス> システム
イメージ図

電源自立型GHP <エクセルプラス> システムイメージ図

多種多様な評価試験を実施し、
信頼性の高いモノづくりをめざす

「エクセルプラス」は、計画停電時や長期停電時にも自立運転ができることを想定したGHPなので、肝心なときに動かなければ大変なことになります。このため、さまざまな設置環境や負荷条件で安定して運転できることをめざし、膨大な数の評価試験を行いました。温度条件としては、通常のGHPより厳しく、夏の高温使用や寒冷地での設置を想定した-15℃~43℃という非常に広い温度範囲での運転評価を実施しました。

室内機の起動試験

室内機の起動試験

しかも「エクセルプラス」は、空調だけでなく発電も行うため、発電負荷と空調負荷の両方を掛け合わせた数多くの運転条件下において、安定した運転が可能であることを確認する必要がありました。また停電時には、安定して発電を行うために、通常時よりもエンジンの回転数を高めに設定する全く異なる運転モードとなり、これらの条件における評価試験も実施する必要がありました。さらに、停電時は室内機への電源供給もGHPから行うため、室内機の機種や台数によらず、運転可能であることも確認しました。このような多種多様な試験により、いざというときのための信頼性を高めています。

照明の起動試験

照明の起動試験

バッテリーについてもさまざまな取り組みを行いました。「エクセルプラス」のバッテリーに求められる特性は、長期間満充電の状態で劣化が少なく、いざというときに確実に電気を送ることであったので、信頼性が高く同種の用途への採用実績が多い、鉛のバッテリーを採用しました。評価に関しては、バッテリーの経年劣化や低温で放電特性の低下を十分に考慮し、4年経過した後でも-15℃で十分に運転可能な耐久性の高いバッテリーを選定評価することで、「エクセルプラス」の信頼性を高めています。

節電にも対応でき、電源セキュリティー
向上にも貢献できる空調機の誕生

それでは、停電時の「エクセルプラス」の動作を説明しましょう。停電時は多くの電気機器と同じように「エクセルプラス」も停止します。この停止状態から、お客さまが自立運転ボタンを押すことによって、バッテリーから制御基板等へ電気を供給するとともに、エンジンを起動し発電を開始します。これを受けて、電力会社からの電気系統からGHP系統の自立回路に切り替わり、空調の室内機と照明へ発電した電気の給電が開始され照明が灯ります。さらに、空調の室内にあるリモコンスイッチを入れると、空調の運転がスタートします。この場合は20 馬力相当の空調負荷に対応しながら、0.7 kW 電力を供給できます。これは500m2の部屋の空調と17本分の照明に相当します。また、空調のスイッチを入れなければ、そのまま発電だけを続けて、2 kWの電気を確実に供給し続けることも可能にしました。

GHPは個別の空調のシステムなので、全フロアの空調をすべて「エクセルプラス」を導入する必要はなく、重要な箇所だけを「エクセルプラス」にすることも、もちろんできます。たとえば病院ならナースステーション、学校なら体育館だけをこの「エクセルプラス」にして、いざ停電だ!というときには、こういった避難場所に集まってもらうという使い方もおすすめです。こうして、東日本大震災を機に高まった停電時の空調や照明を使いたいというニーズにお応えする、日本で初めてのGHPの商品化に成功したのです。

このような数々の取り組みにより、2012年2月8日に記者発表を行い、続いて4月1日には受注開始し、目標の期日に間に合うことができました。これも、他のガス会社様とパナソニック株式会社様が、「エクセルプラス」のコンセプトに賛同し即断してくださったこと、そしてなによりパナソニックの技術者の皆さまがハードなスケジュールにも対応してくださったから成し得たことだと強く実感しています。
GHPはEHP(電気式のヒートポンプ)と異なり、ガスエンジンで圧縮機を駆動するため、節電効果が高いだけでなく、発電機の搭載や、エンジン排熱の利用ができます。今後もこれらの特長を活かし、お客様にこれは良いと感じていただける商品開発を進めたいと思います。

節電にも対応でき、電源セキュリティー向上にも貢献できる空調機の誕生

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