Daigasグループは2026年3月期決算において、3年連続で当期純利益が過去最高となりました。海外エネルギー事業のセグメント利益は、国内エネルギー事業を上回る883億円となり、グループの成長を支える柱となっています。
その一翼を担うのが、米国で20年以上にわたり取り組んできた天然ガス火力発電事業です。2004年、安定した収益を見込める長期契約付きの発電所への出資から、その歩みは始まりました。その後、米国電力市場の環境変化を捉えて、売電価格が市場に連動する発電所へ参画。さらに、出資にとどまらず、自ら発電所の運営を担う道を選びました。
実績も知名度もない中で始まった米国での挑戦は、発電所の目利き力と運営力を育み、現在の事業を支える力となっています。
Daigasグループが米国で歩んできた、20年以上にわたる挑戦の歩みを振り返ります。
米国天然ガス火力発電事業への参入。投資家の立場での出資から、自ら運営する事業者へ
Daigasグループの米国における発電事業は、2004年、テキサス州のテナスカ・ゲートウェイ発電所への出資から始まりました。国内ガス市場の成熟を見据え、新たな成長機会を海外に求めたことが参入のきっかけです。国内で培った発電事業の経験を生かしながら、将来的には海外で得た知見を国内事業へ還元する期待もありました。
米国での第一歩として参画したのは、長期契約によって安定した収益を見込める発電所です。翌2005年にも、同じく安定収益が見込める新たな発電所へ出資しましたが、その後は2008年のリーマンショック後の電力需要の落ち込みなどを受け、市場の動向を慎重に見極める時期が続きました。
転機となったのは、米国経済と電力需要が回復し、発電事業を取り巻く環境が変わり始めた2010年代前半です。シェールガス革命によって天然ガスの供給が拡大するとともに、脱炭素化の流れを背景に、石炭よりも発電時のCO2排出量が少ない天然ガス火力発電への転換も進みました。こうした中、Daigasグループは2015年、長期契約による安定収益型でなく、市場変動を見ながら発電・売電する市場価格連動型のセントチャールズ発電所へ参画。電力需要や燃料価格による収益変動リスクを一定程度受け入れつつ、より大きな収益を目指す挑戦に踏み出しました。
一方、当時は発電所の一部を保有する投資家としての参画にとどまり、日々の運営は外部の事業者に委ねていました。投資家の立場だけでは、運営に関わる機会も、社内に蓄積できるノウハウも限られます。事業をさらに成長させるには、自ら発電所を運営し、価値を高める力が必要でした。そこで、セントチャールズ発電所で協業していたパートナーが新たに開発を進める発電所に着目。同社と共に事業に取り組み、信頼関係を築いていく中で、新規発電所への出資参画と、自ら運営を担うことを提案。協議の結果、その提案が受け入れられ、運営ノウハウを学びながら、段階的に運営を引き継ぐ計画が動き始めました。

米国ニューヨークオフィスでの打ち合わせの様子
メンバー探しから始まった、発電所運営の道
挑戦の舞台となったのが、運転開始前の2017年に参画したペンシルベニア州のフェアビュー発電所です。発電所の運営には、設備の点検や修理だけでなく、電力の販売、燃料の調達、資金管理、法令対応など、幅広い知識が必要です。しかし、当時は米国で発電所を運営した実績も、現地での知名度も十分ではありませんでした。そこで担当者たちは、必要な知識・経験を持つ人材を粘り強く探し続けました。長期的な視点で事業を育てるDaigasグループの方針や、日本で培ってきた発電所運営の実績を丁寧に伝え、目指す事業の姿を共有しながら、各分野の専門家を迎え入れていきました。

米国において主体的な発電所運営の基盤構築に取り組んだ
大阪ガスUSA シニアバイスプレジデント 守井
「必要な人材が集まっても、それだけで一つのチームになるわけではありません。異なる会社や仕事を経験してきたメンバーでは、仕事の進め方やリスクに対する考え方も異なります。日本のやり方を一方的に持ち込むのではなく、現地メンバーの経験を尊重しながら対話を重ね、安全・安定操業を共通の方針としてチームをつくっていきました。また、米国では、一度採用したメンバーも他に良い機会があれば離職していくリスクがあります。人が入れ替わる中でも丁寧な対話を続けることで、少しずつチームとして同じ価値観を持つ組織に進化していきました。」

ボランティア活動に参加する大阪ガスUSAニューヨークオフィスの社員
さらに、フェアビュー発電所の運営開始に備え、2018年には、比較的小規模で稼働中のミシガンパワー発電所に参画し、実務経験を積みました。発電所の状況を把握し、運転や保守を担う企業と調整するなど、実際の業務を通じて、自ら発電所を運営する力を身につけていったのです。
その経験と、安全・安定操業を重視する考え方が表れた取り組みの一つが、冬の寒波対策です。米国北東部では、厳しい寒さで設備が凍結し、発電所の停止によってお客さまに電力を供給できず、ご迷惑をおかけすることがあります。米国では主要設備を屋外に配置することが一般的ですが、フェアビュー発電所では、主要な設備を守るための建屋を独自に設置するなど、凍結を未然に防ぐ対策を進めました。こうした対策は、電力の安定供給に貢献するだけでなく、売電機会の損失や、必要な発電能力を提供できなかった場合のペナルティリスクを抑えることにもつながります。安全・安定操業へのこだわりが、発電所の収益を支える取り組みにもなったのです。

厳しい寒さから主要設備を保護するために設置した建屋
こうしてDaigasグループは、発電所を運営する力を培うとともに、幅広い関係者とのネットワークを築いていきました。投資家から、自ら発電所を動かし、価値を高める事業者へ。米国での発電事業は、新たな段階へ進んだのです。
運営経験を力に、3つの視点で進めた発電所の選択と集中
2021年、Daigasグループは、事業に投じた資金から効率よく利益を生み出す経営を、これまで以上に重視するようになりました。米国の発電事業でも、発電所の保有意義を改めて見直す動きが始まります。
判断軸として重視したのは、少ない燃料で多くの電力を生み出せる「発電効率」、燃料を有利に調達でき、電力需要や送電の条件にも恵まれた「立地」、そして自ら運営し、価値を高められる「主体的運営・価値向上」という3つの視点です。投資に加えて、実際に発電所を動かしてきた経験があったからこそ、設備や市場の数字だけでなく、運営の実態まで踏まえて一つひとつの発電所を見極められるようになっていました。
これらの視点を踏まえて保有資産を見直し、一時は10カ所以上にまで拡大した発電所を、2025年度末には5カ所へ集約しました。その目的は規模を縮小することではなく、競争力があり、自らの強みを生かせる発電所に人材と資金を集中することにありました。こうした選択と集中によって、生成AIの普及やデータセンターの建設による電力需要の増加、市場価格の上昇といった追い風を、着実に収益へと繋げていきます。
さらに2026年度も選択と集中を進め、自社で保有する発電所の出資持分を、他社が保有する別の発電所の出資持分と入れ替える「アセットスワップ」を実施しました。これにより、発電所を3カ所に集約するとともに、より競争力の高い発電所へ資産を移し、新たにその運営も担うことになりました。フェアビュー発電所で積み重ねてきた改善策を別の発電所にも広げ、さらに価値を高めていくうえで、アセットスワップは効果的な一手となりました。

フェアビュー天然ガス火力発電所
米国天然ガス火力発電事業の、さらなる成長へ
今後も電力需要の増加が見込まれる米国では、必要な電力を安定して供給できる発電所の重要性がますます高まっています。天然ガス火力発電は、増加する電力需要に応えるだけでなく、再生可能エネルギーの導入が進む中、太陽光発電や風力発電の発電量が天候によって変化したときにも、必要に応じて発電量を調整し、電力の需給バランスを支える役割を担います。一方で、将来にわたってその役割を果たしていくためには、環境負荷の低減も重要です。カーボンニュートラル社会の実現も見据え、発電時に排出されるCO2を回収し、地下深くに貯留する技術など、新たな技術の活用も視野に入れています。
安定収益を重視した発電所への投資から、新たな成長を目指す挑戦へ。そして、自ら人を集め、組織をつくり、発電所を動かす事業者へ。Daigasグループは、培ってきた運営力を生かし、米国発電事業のさらなる成長へ歩みを進めます。