設備の“声なき劣化”を見極める!大阪ガス・材料評価の舞台裏

26.08.21

設備の“声なき劣化”を見極める!大阪ガス・材料評価の舞台裏

 ガスや電気を安心して使える日常。その裏側では、設備や材料の状態を見極め、劣化による事故や不具合を未然に防ぐための地道な研究が続けられています。

 そうした研究に取り組むのが、大阪ガス 先端技術研究所の計算科学・材料ソリューションチーム 材料評価グループ。配管や設備に使われる金属材料や樹脂材料、発電設備の高温環境で使われる部品など、幅広い設備や材料を対象に、将来にわたる健全性を評価し、日々の暮らしを支えています。

 設備の小さな変化を見逃さず、先回りして備えるため、日々材料と向き合うメンバーの挑戦は、材料評価の技術を次のステージへと進めようとしています。



設備にも「健康診断」が必要。壊れる前に状態を見極める材料評価

 人が健康診断で体の状態を知るように、設備や材料が今どのような状態にあり、これからも安全に使えるのか見極める技術を、「材料評価」といいます。

 インフラ設備は、一度つくれば終わりではありません。ガスを届ける配管、エネルギーをつくるガス製造設備や発電設備は、長い年月にわたって使われ続けます。その間、酷暑や雨風、土壌中の水分など、さまざまな環境の影響を受け、少しずつ状態が変化していきます。

 例えば、金属であればサビなどの腐食、樹脂材料であれば経年による性質の変化、高温で使われる部品であれば熱による強度の低下...。こうした変化を放置すれば、設備の不具合や、供給の安定性に関わるトラブルにつながりかねません。

 だからこそ、壊れてから直すのではなく、状態を正しく把握し、先回りして備えることが重要になるのです。


屋外設備で、長期使用により塗装の劣化や腐食が見られる一例

屋外設備で、長期使用により塗装の劣化や腐食が見られる一例
状態を正しく把握し、設備を長く安全に使い続けるための対策につなげる



ガス管の腐食対策から始まった、材料評価の歩み

 大阪ガスの研究開発の歴史は古く、1947年の中央研究所(現:先端技術研究所)設立から始まります。1960年代には供給エリアの拡大に伴い、地中に埋設するガス管も急速に増えていました。長く安全に使い続けるためには、土の中で進行する腐食から守る必要があります。そうした課題に向き合う中で、材料に関する研究開発が始まりました。そして現在、ガス管だけではなく、ガス製造設備や発電設備、ガス給湯器に代表されるガス利用機器など、それらに使用される材料へと、対象領域は大きく広がっています。

 対象は多岐にわたりますが、見ているのは「材料の変化」です。現在の状態や変化を読み解き、これからも安全に使い続けられるかを判断しています。小さな変化を見逃さず、安定供給とお客さまの日常を支えること。それが、チームが抱える大きなミッションです。


評価対象や試験サンプルの一例

評価対象や試験サンプルの一例



限られたサンプルから、設備の未来を読み解く

 材料評価の仕事は、研究所の中だけで完結するものではありません。そこで重要になるのが、「現場現物」に向き合う姿勢です。

 例えば、材料の劣化状態や寿命を見極めるために、火力発電所で10年以上使われた設備の部品や、長期間使用されたガス管などを回収し、その状態を詳しく分析します。実際の設備を丸ごと調べることはできないため、回収したサンプルから、どのような環境で使われ、どのように劣化が進んできたのかを読み解いていく必要があります。

 しかし、答えが最初から見えているわけではありません。同じ材料でも、設置場所や使用環境によって状態は大きく変わります。限られたサンプルからどれだけ多くの情報を読み取れるかが、材料評価の難しさでもあり、奥深さでもあるのです。

 現場や目の前の材料をよく見て、考え、違いを見つける。そうした姿勢は、経験を重ねたメンバーから若手へと受け継がれ、チームの大切な財産になっています。


サンプルの腐食状態を測定・評価する様子

サンプルの腐食状態を測定・評価する様子



異なる世代、異なる視点。一人ではたどり着けない答えをチームで導く

 材料評価の技術は、一朝一夕で身につくものではありません。分からないことに直面したときは、チーム内で議論を重ねながら、それぞれの経験や専門性を持ち寄り、原因や対策の方向性を探っていきます。その中心にいるのは、専門領域を牽引するフェロー(※)の存在。高度な専門知識や経験を有し、それぞれの分野の第一人者として研究や事業を支えています。

 若手メンバーにとってフェローは、技術的な相談相手だけではなく、現場で何を見るべきか、どこに着目すべきか、どのように考えるべきかを学べる存在でもあります。

 一方で、若手メンバーも新たな強みをチームにもたらしています。デジタル技術に親しんできた世代ならではの視点を生かし、2020年ごろから材料評価に関するデータの蓄積を進め、2022年ごろからはAIを活用した解析にも力を入れてきました。これまで2時間ほどかかっていたデータ処理を数分でおこなえるシステムを構築したほか、蓄積したデータを分析することで、設備や材料の状態をより多面的に把握し、将来の劣化リスクを予測する取り組みにもつながっています。


※大阪ガスでは、高度な専門能力を持つ限られた人材を「フェロー」として任命しています。フェローはDaigasグループにおける専門領域の第一人者として、Daigasグループの事業活動の推進・支援を通じて、会社に貢献しています。


フェローから若手まで、それぞれの知見や経験を持ち寄りながら研究を進める

フェローから若手まで、それぞれの知見や経験を持ち寄りながら研究を進める


 2026年には、フェローの一人である山中 秀文氏が、公益社団法人腐食防食学会の技術功労賞を受賞しました。腐食・防食分野における技術の発展や普及に貢献した技術者に贈られる賞で、長年にわたる研究や技術開発への貢献が評価されたものです。

 しかし山中氏は、「自分一人の力ではなく、チームの力があってこそ」と話します。長年培われた知見を受け継ぎ、新しい技術も取り入れながら研究を進めてきた若手メンバーをはじめ、多くの人が関わってきたことが、今回の受賞にもつながったのです。


※公益社団法人腐食防食学会の2026年度技術功労賞受賞についてはこちら



当たり前の安心の裏側に、材料と向き合う人たちがいる

 材料評価グループが見据えているのは、設備や材料の「今」を評価するだけではありません。変化の兆しをいち早く捉え、先回りして対策につなげる、そうした「予知・予防保全」の重要性は、今後ますます高まっていくと考えられています。その実現に向けて、近年は気象データや風向・風速、過去に蓄積してきたデータなどを活用しながら、AIやシミュレーションによって将来の劣化リスクを多面的かつ高精度に予測する研究も進んでいます。


 今日も当たり前にガスや電気が使える。そんな日常の裏側には、設備や材料の小さな変化を見逃さず、日々の安定供給を支え続ける人たちがいます。

 表舞台に立つことは多くありません。それでも、事故や不具合を未然に防ぎ、人々の暮らしを守る材料評価グループは、大阪ガスの安全・安心を支える「影の大黒柱」であり続けています。


材料評価グループ

後列左から、西川フェロー、伊藤、末澤
前列左から、山中フェロー、藤本、永井


※大阪ガスの材料評価の取り組みについてはこちら

Daigasグループの「2050年脱炭素社会実現」に向けた挑戦
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