低・脱炭素社会の実現-Daigasグループの取り組み-

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外部環境の認識

脱炭素化潮流がさらに加速するなか、世界経済の停滞やエネルギー市場におけるボラティリティの高まりが顕在化しています。国のエネルギー政策の基本方針である“S+3E※1”の観点からもエネルギーの安定供給・保安の確保とエネルギーのカーボンニュートラル化の両立が重要と考えています。

  • ※1 S+3E : 安全性(Safety)、安定供給(Energy security)、経済効率性(Economic efficiency)、環境性(Environment)

2022年度の振り返りと今後の戦略

2021年に発表した「カーボンニュートラルビジョン」のもと、2022年度はメタネーション※2の2030年度本格導入に向け、技術開発や再生可能エネルギーの開発を進めるとともに、国内外の「e-メタン※2」等のサプライチェーン構築の取り組みを強化しました。また、外部環境を上記のとおり認識し、エネルギーの低・脱炭素化への移行に向けた道筋の全体像を示すため、2023年3月に「エネルギートランジション2030(ET2030)」を発表しました。

  • ※2 メタネーションとは、水素とCO2から都市ガスの主成分であるメタンを合成する技術のこと。メタネーションによって合成されたメタンを「e-メタン」という

「カーボンニュートラルビジョン」と「エネルギートランジション2030」 「カーボンニュートラルビジョン」と「エネルギートランジション2030」

指標と2022年度実績

グループCO2排出量 2,598万トン※3
2,505万トン※4

「ET2030」を発表し、2030年度におけるグループCO2排出量削減目標を掲げました。

目標の達成に向け、社用車のCO2排出量ネット・ゼロ化等の取り組みを推進していきます。

  • ※3 グループバリューチェーン(スコープ1・2・3)における温室効果ガス(GHG)排出量
  • ※4 国内サプライチェーン(スコープ1・2・3)における排出量(「ET2030」で新たに2030年度目標を設定)
再生可能エネルギー電源比率 13.0%
再生可能エネルギー普及貢献量 211.0万kW

2022年度は国内外での太陽光発電所の共同開発や、国内での新たな風力発電所の商業運転の開始等に取り組み、再生可能エネルギー電源の普及を進めました。再生可能エネルギー普及貢献量は2023年度目標の250万kWに向け、順調に増加しました。

CO2排出削減貢献量※5(2016年度基準) 386万トン

都市ガス製造所での冷熱発電、国内の再生可能エネルギー電源や国内外での高効率な火力発電の導入、お客さま先における燃料電池やガス空調・高効率給湯器等の導入、国内外での天然ガスへの燃料転換などに努めました。

エネルギートランジション2030

Daigasグループは、「エネルギートランジション2030(ET2030)」において、エネルギー低・脱炭素化の全体像を描いています。

カーボンニュートラル実現のための技術革新・新たなサプライチェーン構築には多くの時間や社会的コストがかかることから、それまでの確実な低炭素化が重要となります。また、電気・熱の利用バランスや立地等のお客さまのエネルギー利用特性に合わせて、最適なエネルギーや供給方式を選定することも重要です。石炭・石油から天然ガスシフトによる2030年までの低炭素化、将来の「e-メタン」やバイオガスの導入によるシームレスな脱炭素化への移行を軸に、お客さまのニーズに合わせて水素・アンモニアの利用、再生可能エネルギー発電や火力発電所のゼロ・エミッション化を含む電源の脱炭素化を進めていきます。CO2削減に向けたロードマップと、下記図で示す①天然ガスの高度利用による低炭素化、②「e-メタン」の社会実装に向けた取り組み、③カーボンニュートラルに向けた電力事業の取り組み、④CO2回収・利用・貯留に関する取り組みによる脱炭素化について、主な取り組みの背景・考え方を紹介します。

イメージ

エネルギートランジション2030 ※1 CN-LNG:「カーボンニュートラルなLNG」の略称であり、天然ガスの採掘から燃焼に至るまでの工程で発生する温室効果ガスを、別の取り組みで吸収・削減したCO2で相殺することにより、地球規模ではCO2が発生しないとみなされるLNG ※2 CCUS:二酸化炭素の回収・利用・貯留(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage)

DaigasグループのCO2削減ロードマップ

「エネルギートランジション2030」では、国内サプライチェーンCO2排出量と社会全体へのCO2排出削減貢献量について、2030年、2050年の目標を掲げ、CO2削減ロードマップを示しています。既存インフラへの「e-メタン」の1%導入等により、2030年度にDaigasグループの国内サプライチェーンにおけるCO2排出量削減500万トンに加え、当社グループの活動による社会全体へのCO2排出削減貢献量1,000万トンを目指します。「e-メタン」導入後の2030年度以降は、「e-メタン」の普及拡大等による脱炭素化を進めます。

DaigasグループのCO2削減ロードマップ ※ 規模感を示す表記とするための1桁目の数値を切り捨てて記載

ICPの導入について

大阪ガスでは、2003年から「環境経営効率」の考え方を導入し、ガス製造量あたりの環境負荷を金額換算することで、事業活動による環境負荷を定量的に把握しています。

さらに、2021年度からは投資済みの案件を対象に、内部的な炭素価格(Internal Carbon Pricing:ICP)を活用して、事業による炭素影響の把握に努めています。また、2023年度からは、炭素影響の大きな事業領域における新規投資意思決定の判断材料の一つとしても活用しています。

住友林業グループ組成の森林ファンドへ共同出資

大阪ガスは、2023年7月に当社を含む日本企業10社とともに住友林業グループ組成の森林ファンド「Eastwood Climate Smart Forestry Fund (I 以下、本ファンド)」への共同出資を表明しました。

本ファンドの規模は約600億円で運用期間は15年の計画です。本ファンドは今後2027年までに北米を中心に約13万haの森林を購入・管理する計画であり、毎年約100万トンのCO2吸収を新たに生み出し、質の高いカーボンクレジットの創出・還元で脱炭素社会の実現に貢献します。

本ファンドの仕組みを活用することで個々の企業では実現できない面積・資金規模で森林を適切に管理し、グローバルな気候変動対策を実践します。

①天然ガスの高度利用による低炭素化

Daigas グループは、石炭・石油などからCO2排出量の少ない天然ガスへの燃料転換や、省エネ技術(コージェネレーション等)の導入を進めており、これにより社会全体のCO2削減に貢献しています。また、燃料転換は関西地域だけでなく、国内の広域エリアやアジア地域でも実施しており、今後も本活動を拡大していきます。

ガスコージェネ

ガスコージェネレーションシステム導入による低炭素化への貢献

当社グループは、お客さま先へのガスコージェネレーションシステムの導入により、低炭素化に貢献しています。コージェネレーションシステムは、都市ガスを用いて発電し、その際に発生する排熱を冷暖房や給湯、蒸気などの用途に利用することで、70~90%と高い総合エネルギー効率を実現しています。1982年の導入開始以降、累計約150万kWの設置実績となっています。2022年3月には、発電効率をさらに改良した新型のガスコージェネレーションシステムを開発しました。停電発生時にガスを燃料として発電できるため、電源セキュリティの向上にも寄与します。

社会全体へのCO2削減貢献についての考え方

社会全体へのCO2削減貢献の考え方を整理しています。例えば、石炭から天然ガスへの切り替えでCO2を約45%削減できますが、天然ガスを当社が供給した場合、当社のガス販売量が増え、企業で一般的にCO2排出量の算定に用いられるGHGプロトコル※1の算定では、スコープ3としてCO2排出量が増えることになります。そのため、2030年までのトランジション期には、石油・石炭から天然ガスへの燃料転換を進めることで、当社のCO2排出量は増加します。一方、天然ガスへの切替によって、同一熱量あたりのCO2排出量は削減するため、社会全体のCO2排出量の削減に貢献できます。しかしながら、GHGプロトコルでは、他者への貢献による社会全体のCO2削減効果を評価できません。

多くのお客さまと低・脱炭素化を着実に進めていくためには、社会全体のCO2排出量削減効果を示す指標(CO2排出削減貢献量)のもと進捗の把握をし、ステークホルダーのご理解を得ることが重要と考えています。

  • ※1 GHGプロトコル:温室効果ガス排出量の算定と報告のための国際基準
  • 同一熱量あたりのCO2排出量※2 同一熱量あたりのCO2排出量 ※2 「特定排出者の事業活動に伴う温室効果ガスの排出量の算定に関する省令」(経済産業省・環境省)に基づき作成

    「CO2排出削減貢献量」とは 「CO2排出削減貢献量」とは

  • CO2排出削減貢献量の計算例 CO2排出削減貢献量の計算例

②「e-メタン」の社会実装に向けた取り組み ~2030年に向けたトランジションの取り組み~

Daigasグループは、再生可能エネルギーから作り出される水素とCO2から合成する「e-メタン」が、都市ガスのカーボンニュートラル化の鍵になると考えています。「e-メタン」には追加的な社会コストの低減など価値があります。当社グループでは「e-メタン」の社会実装に向け、様々な取り組みを行っています。

「e-メタン」のサプライチェーンと社会実装コストメリット

大気中に排出されるCO2を再利用し、水素と合成することで生成する「e-メタン」は、燃焼しても大気中のCO2が増加しないことから、カーボンニュートラルなエネルギーと考えられます。

さらに「e-メタン」は都市ガスとほぼ同じ成分であることから、都市ガスの既存インフラやお客さま先の燃焼機器がそのまま使え、トランジション期からのシームレスな脱炭素が可能なため、社会実装コストを低減できるメリットがあります。

「e-メタン」の供給サプライチェーン 「e-メタン」の供給サプライチェーン ※1 バイオ由来のCO2や将来的にはDAC(Direct Air Capture:大気中の二酸化炭素を直接吸収・除去する技術)由来のCO2も活用する可能性がある ※2 CCU:二酸化炭素の回収・利用(Carbon dioxide Capture and Utilization)

「e-メタン」の4つの提供価値

「e-メタン」には、お客さまや社会へ貢献できる4つの提供価値があります。当社グループでは、これらの価値を踏まえて、2030年度時点で「e-メタン」を当社ガス販売量の1%導入を目指しています。

4つの提供価値 4つの提供価値

国内外でのe-メタンのサプライチェーン構築

Daigasグループでは、2030年からの「e-メタン」本格導入に向けて、多様なメタネーション技術の確立とともに、エネルギー源である再生可能エネルギー開発や、お客さまとの連携による水素・CO2調達を含めた国内外におけるサプライチェーンの構築を検討していきます。

関西の都市ガス供給エリアを中心に導入を検討し、必要な要素技術やサプライチェーンの実現可能性を総合的に検証して、最適な「e-メタン」供給モデルの確立を目指します。また、「e-メタン」導入に向けては、国内だけでなく海外サプライチェーン構築も有力な選択肢の一つと考えています。国内外の事業者と連携しながら、海外サプライチェーン構築についても複数の事業可能性調査(FS:Feasibility Study)・基本設計を実施しています。将来の安定調達を目指し、既存天然ガス・LNG設備が利用可能な北米・南米・豪州・中東・東南アジアエリアを中心に検討を実施して製造適地を絞り込むとともに、新たな利用先としてアジアでの「e-メタン」利用・普及を目指します。

「e-メタン」のサプライチェーン構築

多様なメタネーション技術を確立

①サバティエメタネーション(既往技術)※1
既往技術のため、大規模化による早期の社会実装が可能
②バイオメタネーション(革新技術)※2
地産地消のエネルギー製造・利用が可能
③SOECメタネーション(革新技術)※3
高効率化によるエネルギーコスト低減が可能

メタネーション技術の社会実装ロードマップ メタネーション技術の社会実装ロードマップ ※1 再生可能エネルギー由来等の水素と、CO2を触媒反応させることによってメタンを合成する技術 ※2 微生物のはたらきによって二酸化炭素と水素からメタンを作る技術 ※3 再生可能エネルギー等により水やCO2をSOEC電解装置で電気分解して水素や一酸化炭素を生成し、これを触媒反応させることによりメタンを合成する技術

海外サプライチェーン構築

米国
バイオエタノールプラントから回収するバイオマス由来のCO2と、天然ガスを改質して得られるブルー水素を用いた「e-メタン」の製造について共同検討を実施中
(主な事業者:Osaka Gas USA Corporation、Tallgrass MLP Operations, LLC、Green Plains Inc.)
キャメロンLNG基地近傍における「e-メタン」製造の共同検討を実施中
(主な事業者:大阪ガス、東京ガス(株)、東邦ガス(株)、三菱商事(株))
東南アジア
マレーシアにおいて、未利用森林資源等のバイオマスをガス化し、メタネーションを行うことで、再エネ電力価格に影響されない「e-メタン」製造について共同検討を実施中
(主な事業者:大阪ガス、(株)IHI、PETRONAS Global Technical Solutions Sdn. Bhd.)
豪州
工業分野の排ガスや天然ガス液化プラントから回収するCO2と、再エネ電力で水を電気分解してつくるグリーン水素を用いた「e-メタン」製造について共同検討を実施中
(主な事業者:Osaka Gas Australia Pty Ltd、Santos Ltd)
南米
ペルーLNG基地を活用し、再エネ電力で水を電気分解してつくるグリーン水素とCO2を用いた「e-メタン」製造について共同検討を実施中
(主な事業者:大阪ガス、丸紅(株)、PERU LNG S.R.L.)

③カーボンニュートラルに向けた電力事業の取り組み~2030年に向けたトランジションの取り組み~

電源の低・脱炭素化

2030年度目標の一つとして掲げた500万kWの再生可能エネルギー普及貢献※1に向け、日本全国で様々なパートナーとともに風力、太陽光、バイオマスといった幅広い再エネ電源種の開発を推進しています。

併せて電力系統蓄電池、VPPの活用に向けた取り組みや、調整力として必要な火力発電所の低・脱炭素化に取り組んでいます。

  • ※1 FIT電源含む

VPPによる省エネルギー・系統需給の安定化

VPPとは、IoTを活用したエネルギーマネジメント技術により、分散型のエネルギーリソースを遠隔・統合制御することで、1つの仮想発電所のように電力の需給バランス調整を行う仕組みです。

Daigasグループは、再エネ大量導入社会における電力系統の安定化に貢献するべく取り組みを進めています。2022年6月には、家庭用燃料電池「エネファーム」を活用したVPPの構築実証事業を開始しました。

再生可能エネルギー電源開発・普及の2022年度以降の主な取り組み 再生可能エネルギー電源開発・普及の2022年度以降の主な取り組み ※2 2023年7月末時点での再生可能エネルギー普及貢献量は224万kW

④CO2回収・利用・貯留に関する取り組み

Daigasグループは、大気中に排出されるCO2を再利用(CCU※3)し、メタネーションにより「e-メタン」を製造・供給することで、お客さまのCO2排出を削減して環境負荷を低減する循環型社会の貢献を目指しています。これに加えて、CO2バリューチェーンを形成し、CCS※4によって地中深くに圧入・貯留することを検討し、国内外で共同検討等の取り組みを進めています。

  • ※3 CCU:二酸化炭素の回収・利用(Carbon dioxide Capture and Utilization)
  • ※4 CCS:二酸化炭素の回収・貯留(Carbon dioxide Capture and Storage)

CO2バリューチェーンのイメージ CO2バリューチェーンのイメージ ※5 H-to-A産業:CO2排出削減が困難な産業(Hard to Abate)

CO2バリューチェーン構築への取り組み

CO2バリューチェーンの構築に向けて、CO2排出削減が困難な国内の鉄鋼・セメント・化学産業の工場などから排出されたCO2の回収、輸送と利用や貯留についての共同検討等を開始しました。

  • CO2バリューチェーン構築の共同検討

    当社の「e-メタン」やCO2貯留に関する知見と、三菱重工業(株)によるCO2回収、液化CO2の船舶輸送、CO2マネジメントに関する知見を組み合わせ、効率的なCO2バリューチェーン構築の実現可能性を検証することに合意。

  • シェルとのCCSバリューチェーン構築に関する共同検討

    Shell Singapore Pte. Ltd.と、国内の工場などのCO2を回収し、海外の貯留地にCCSすることを目指したCCSバリューチェーン構築に関する共同検討を開始。

  • 泉北コンビナートから排出されるCO2の回収と利活用に関する共同検討

    三井化学(株)と、泉北コンビナートから排出されるCO2を回収し、利活用する事業の共同検討を開始。